大阪府豊中市新千里北町2丁目40番 

未分割財産を売却(換価)した場合の譲渡所得の確定申告について

【Q】父親が亡くなり、土地を相続しました。法定相続人は、私(長女)と次女、長男の3人です。相続税の申告期限まであと半年となりましたが、未だに遺産分割協議が完了していません。相続税納付のため、相続した土地を売却に出したところ、購入希望者が現れ、予想以上に早く売れてしまいました。この相続した土地の売却代金に譲渡所得税はかかってきますか?

【A】未分割財産(今回のケースでは、土地)を売却した場合は、以下のように取り扱います。

① 売却時に売却代金の取得割合が決まっている場合
売却時に、遺産分割協議などで、すでに未分割財産の売却代金の取得割合が決まっている場合は、その取得割合に応じて、各人が譲渡所得の確定申告をすることになります。
 
 
② 売却時に売却代金の取得割合が決まっていない場合
今回のケースのように、遺産分割協議が完了していなくて、売却代金の取得割合が決まっていない場合は、以下の2つの方法のうちいずれかによります。
 
(1)譲渡所得の確定申告期限までに取得割合が決まれば、その取得割合に応じて、各人が譲渡所得の確定申告をすることになります。
(2)譲渡所得の確定申告期限までに取得割合が決まらなければ、法定相続分で売却代金を取得したとみなして、各人が譲渡所得の確定申告をすることになります。ただし、申告期限後に取得割合が決まっても、遡って、更正の請求や修正申告はできないこととなっています。
 
今回のケースでは、遺産分割協議が済んでいない状況、すなわち売却代金の取得割合が決まっていない状況ですので、上記解説の②に従います。
 
注意すべき点としては、②(2)の「申告期限後に取得割合が決まっても、遡って、更正の請求や修正申告はできないこと」という取扱です。
 
その他、レアケースになりますが、特定の法定相続人が父から住宅購入資金の贈与を受けていたこと(特別受益)により、相続税の計算結果、相続分がゼロとなり、相続税の負担がゼロのようなケースです。このような場合は、たとえ土地の売却代金を受け取ることができなかったとしても、譲渡所得の確定申告義務が生じてしまうということです。
相続分がゼロでも(すなわち、土地の売却代金を受け取ることができなかったとしても)、譲渡所得の確定申告をする必要があるということです。土地の売却代金を受け取ることができなかったのに、譲渡所得の確定申告義務があるのはおかしいと感じるかもしれませんが、そもそも特別受益を受けとっているから、という理屈になります。
 
未分割財産を売却した場合は、できるだけ譲渡所得の申告期限までに、取得割合を遺産分割協議などで決めておくことが重要となります。

【根拠条文】
国税庁 質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」
相続税法55条 「未分割財産に対する課税」
国税通則法23条2項

ご相談、お問い合わせは、豊中市 千里中央の松田税理士事務所へ